令和2年度男木小中学校入学式 PTA会長祝辞

本日の入学式にあたり、PTAを代表いたしまして、お祝いの言葉を述べさせていただきます。

本日はご入学、おめでとうございます。

感染症、新型コロナウイルス、COVID-19がパンデミックを起こし、世界中の国々、町、学校、家族が動けなくなってしまっている世界の状況で、本日、こうして集まって、お二人の入学を記録する儀式を挙げることができることもまた、喜びたいと思います。なんだかんだ、ないと寂しいものですね。

さて、東京では昨日、安倍首相が東京、大阪、福岡などの大きな都市で緊急事態宣言を出しました。日本の政府が前回、自らの意思でこのような宣言を発したのは、今から79年前の戦争を始めるときでした。これが何なのかを簡単にいうと、「マジでヤバイから本気出します。なのでみんなしっかりついてきてよ」宣言です。

3週間前の卒業式、私はこの場所で、今日と同じように、3つのお話をしました。ひとつ、みなさんの寿命は、病気や事故なくいけば、100歳くらいであること。ふたつめ、みなさんが生きる未来は信じられない形で変わり続け、予測ができないこと。みっつめは、変わり続ける世界で楽しく生きる秘訣は、私たち自身が変わり続けることだということです。今日は、もう少し深く、どうすれば変化できる人間になれるのかと、最近私が考えたことをお伝えします。

私たちが今生きているこの世界は、ほんの3週間前とは違う世界です。去年の春と比べると、想像もできない世界になってしまいました。

日本中の春休みが、夏休みみたいな長さになるなんて、そんなことがあり得ると考えたことはありましたか?オリンピックが中止になるなんて、想像もしませんでしたよね。会社に行っていたたくさんの大人が、家のリビングから仕事をするように変わるなんて。。。

今からちょっとタイムマシーンに乗って、去年の自分に会いに行くことを想像してみてください。「やあキミ、ボクは一年後の未来から来たキミだよ。あのね、感染症が大変なんだ。世界中の病院で毎日人が死んでしまって、人類は普段の生活をやめてみんな家で大人しくしてる。日本でも春休みが夏休みの長さになって、オリンピックは延期だよ。それから、志村けんさんが死んでしまった。みんな悲しんでいて、怖くて、テレビはそのことばかり話しているんだ」

去年の僕たちが、こんなことを言われたら、信じられたでしょうか?アハハハ、そんなSFみたいなこと。。。と反応したでしょう。多分。こんなことを「本当に」信じて受け入れることは、無理でした。

未来はわからないんだ、予測できないんだ、僕はもう何年も、そんなことを考えながら生きてきました。それでも、まさかこんなことになるなんて思いもしませんでした。こんな変わり方をするなんて想像できなかった。そして、私たち自身が、こんな風に社会の動かし方を変えることができるなんて、想像できていませんでした。

でも今はできる。想像力。これが、未来を生きるためのヒントなのだと気が付きました。

この感染症による非常事態は、いつかは必ず終わります。1年か2年すると、病気を治す薬や病気にかかりにくくするワクチンが出てきます。インフルエンザやエイズのように人間が緊急事態っぽくない形でコントロールできる世界になり、学校は始まり、オリンピックは開かれ、人々はまた外を自由に歩き回り、握手やハグをして、オフィスで打ち合わせをして、カフェでお茶をして、レストランで食事をし、旅行をするようになります。

でも、その新しい世界は、こないだまでの世界とはだいぶ違っています。人類は変わってしまったのです。人は、もっと柔軟で、自由になります。自分たちは人類として危機が迫ったときにはオリンピックや学校や仕事や電車やお店を止めてしまえる生き物なんだということに世界中が気がついたのです。「コロナで大変だったときはあんなことやこんなこともできたんだから、今だって何かできるよ。できない理由はないじゃないか」という考えが、みんなの頭の中に生まれ、無くなることはないのです。コロナのことを考えなくて済んだ世界のことは懐かしく感じられることでしょう。環境問題は人間をコロナウィルスよりも多く殺してしまっています。でも、対策することは無理なんだとみんな思っていた。これも、できると感じる人が増えたはずです。みなさんも、学校が休みになってみて「あれ?学校ってなんだろう。宿題ってなんだろう。日本中の子どもが学校に毎日集まるこの感じって、何なんだろう?」って、ちょっと考えてみた人もいるんじゃないでしょうか。この世の中に、決まっていることなんて、ないんです。私は男木島に来るフェリーを止めたり便数を減らすことを提案しようかなと思っています。

今から700年くらい前のことですが、ペストという感染症で、人間の3人に1人が死んでしまったことがあります。本当に怖かったことだと思います。この感染症を通して、人類に起こったことをいくつか紹介します。

100年間ずっと続けていた戦争をおしまいにしました。たくさんいた奴隷たちが解放されました。神様について、考え方が変わりました。芸術が大盛りあがりしました。ルネサンスと言いますが、その意味は、「もう一度生まれる」という言葉です。これから、そういうことが、もう一度起こることになります。

今、私達にできることは、新しく生まれ変わるその未来に備えて、まずは生き残ることです。外に出かけるときには、マスクをしましょう。人が集まってワイワイやっているところには行かないようにして、薬やワクチンができるまで、できるだけ病気にかからないでいましょう。人に、病気を移さないようにしよう。そのうえで、少しずつ、想像力がパワーアップした未来を楽しみにしながら、自由になった世界で自分たちに何ができるのかを想像してみましょう。

男木小中学校は、先生も保護者も地域もだいぶワイルドで、変化を楽しめる学校だと思います。何かいいことを思いついたら言ってみましょう。校長先生もいつも言っていますが、やってみなくちゃわからないのです。変だと思われちゃうかなと心配してしまうことでも、やってみましょう。無理かもしれないと、昔なら思っていただろうことを、やっちゃいましょう。それが、自分も変わり続け、社会も変え続けて生きるということなのだと思います。あと半年や一年、2年はこんな感じで大変な状況が続きます。せっかくですから、いろんなことを想像して、やってみて、変わり続ける自分の練習してみましょう。

今日は入学式という人生の節目ですから、未来の話をしてみました。あらためまして、おめでとうございます。これで挨拶を終わります。

令和2年4月8日
高松市立男木小中学校PTA会長
西川伸一

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