ポッドキャストの配信方法についてまとめてみました。
今回の記事のコンセプトは「お手軽」です。
ポッドキャストはシンプルに見えて実は奥が深いです。こだわり具合によっては、どこまでもツール類にお金をかけることができます。時間もどんどん使ってしまいます。が、ちょうどういいお手軽さを目指すことで、コストをかけすぎずに済ませて、楽しい人生の一面を作り出すこともできます。
今回は僕がやっている方法、できるだけシンプルで、お金や時間などのコストを削減したやり方をご紹介します。こだわりすぎてしまって続かなくなるより、パッと録ってパッと上げちゃうことで長く続いたほうがいいな、と思うためです。
僕はこのやり方で、これまでに3つのポッドキャストをやってきておりまして、今も4つ目をこのウェブサイト上で配信しています。いままでの累計のダウンロード数は2万回くらいです。また、5つ目も検討中です。
ポッドキャストの配信はすごく簡単で、楽しくて、世界が広がるものなので、みなさんもぜひやってみてください。楽しさについては3年ほど前に「WordPressでポッドキャストのススメ あるいは発信するのって楽しいしWordPressいいよね」という記事も書いていますので読んでみてください。この記事、あるいは、以下を指南を読んで、あら簡単じゃないか、自分でもやってみようという方は、iTunesへの番組登録が終わったらぜひ @shinichin までお知らせください。
メニューは以下のものです。
- 携帯録音のためのツールの紹介
- 手軽な音声編集の塩梅。Mac のGarageband を使ってます
- 音楽の追加は YouTube Audio Library
- WordPress での配信、アクセス解析など
- iTunes での配信方法、Android など iPhone 以外で購読者への配信方法
- リモート録音には、Skype とかではなくて Zencastr.com がオススメ
1. 携帯録音のためのツール
気軽さ、パッとできることを重視する場合には、録音のための道具はどこにでも運べていつでも取り出せる必要があります。携帯用のツールだと、iPhoneでもできます。録音のアプリがデフォルトでついていて、それでできないこともありません。
が、僕が使っているのは、Panasonic のICレコーダーでして、これがオススメです。
こうしたレコーダーがiPhoneよりも優れているのは以下の点です。
- 電池が持つ。充電式じゃないので切れてもすぐに電池を入れ替えて使える。大事。
- 音がiPhoneよりもいい気がする
- レコーダーは容量が大きいので、頻繁に消さなくていいし、途中で録音が止まったりしない
- USB経由で接続して音を取り込めるのが楽。iTunes を経由して取り込みなどの手間がない
- 録音をしている途中で電話がならない
携帯ツールではなく、スタジオや自宅で録音する人たちは、マイクを買ったり専用のソフトウェアを整備したりと、もっときちんとした設備をもって、よい音質を担保しているようですが、僕は携帯がしたいのと気楽さを選びたいので上記のものに落ち着いています。
2. 手軽な音声編集の塩梅。Mac のGarageband を使ってます
編集の方法というと怒られてしまうくらいほとんど何もしていないのですが、クオリティをできるだけ上げつつ、コストをかけすぎないという方針のもと、以下のような流れで作業しています。
- ICレコーダーから 001-raw.mp3 などの名前で Mac に保存
- Garageband で取り込み。ファイル名を 001.band に
- ノイズを小さくする
- 長過ぎる間(ま)や子どもが急に話しかけてきた部分、「えー」とかがいらいらするくらいあるところなど、いらない部分をカットする
- 前後に音楽を追加
- 001.mp3 という名前で書き出す
- アップする
1, 2, 6で指定しているファイル名は意外に大事です。いくつか録音しているけど編集やアップができていないときなどには、どれがどれだか分からなくなるんです。どれが編集したやつだっけ?というかあの時録音したのはどれだっけ?みたいになります。
で、一番シンプルなのは連番で管理することでした。複数シリーズがある人はフォルダを分けて、その中で連番で管理するのがいいと思います。もともとのデータが nnn-raw.mp3、編集中のものが nnn.band、編集が完了したものは nnn.mp3 です。
3番のノイズのキャンセルは、サーとかザーみたいな漠然とずっとある雑音がキャンセルできます。これをやられる方は別のツールが必要になってしまうのですが、Audacity を利用して、音声のサーっていう雑音・ノイズを取り除く方法を参考にしてください。
4番目は長すぎる間(ま)、要らない箇所、「えー」「あのー」などの「ケバ」とりです。
お手軽ポッドキャストの利点は簡単に録音ができることです。お、時間あいたね、とか、例の件について今やっちゃおう!とかができるわけです。反面、コンテンツのお品書きを事前に作り込んではおらず、明確に言葉になりきっていることを話すわけではありません。結果、考える時間(しゃべってない時間)が増えたり、不要なことを喋ってしまったり、「あのーそのーつまりー」という言葉が多くなったりしてしまいます。臨場感や本音が出るというのもあり、これ、ある程度残っていてもいいと僕は考えてるんですが、酷いところはとるとスッキリします。いらない箇所を削って前後の流れがおかしくなったりしないの?と思うかもですが、意外なことに大胆にやっちゃって大丈夫です。ザクッときってもリスナーの脳が補完してくれます。脳すごい。
3. 前後に音楽を追加。YouTube Audio Library を活用する
これも全然なくてもいいんですけど、ちょっと足すと作ってる自分が楽しいんです。出てくれた人もちょっとうれしくなってくれるかもしれない。音楽をどこから調達するのかというと、Google が提供している「YouTube Audio Library」がオススメです。
YouTube Audio Liabrary とは、動画で利用できる無料の音楽や効果音をダウンロードできるサービスです。
- クラシックや映画音楽
- ポップやジャズなどの「ジャンル」
- 明るいとか怒りなどの「気分」
- 使われている「楽器」
- 「曲の長さ」
- 「帰属表示の有無」
で絞り込んで探すことができます。
著作権使用料は無料で、帰属の表記が必要なものと不要なものがあります。上の画像で丸に人間のマークがついているものは表記が必要です。僕はポッドキャストで表示が難しいので、帰属表示のないものを絞り込んで選びます。著作権や帰属表示についての詳しい内容は、オーディオ ライブラリから音楽を入手する – YouTube ヘルプで読むことができます。
これをダウンロードしてきて Garageband で前後に付け加えています。声だけのものと比べて、急に素人臭さがごまかされます!
4. WordPress を使った配信の方法
音源の作成が完了したら、今度はこれを配信しなくてはなりません。ここで、ポッドキャストを配信するとは、技術的にざっくりとどのようなことなのかを整理しておきます。
そもそもポッドキャストって?
ポッドキャストを聞いたことのある人ならわかると思いますが、「登録」や「購読」というボタンがありますよね。あのボタンが意味するところはなんなのか?ということです。実は、iPhoneのポッドキャストのアプリなどについている「登録」のボタンは、ブログなどにある RSS フィードの購読とほとんど同じものです。作成されるフィードのフォーマットに音声(と動画)への対応があるかないか、RSS リーダーは文字のみだけどポッドキャストのアプリは音声の再生に対応している、くらいの違いです。(たとえばこのウェブサイトで配信している「男木ラジオ」というポッドキャストで言うと、フィードは https://ogi.osampo-radio.com/feed/podcast/ja で見ることができます。ブラウザでソースを見る、とやると生のフィード場見えます)
ユーザーのポッドキャストアプリは、配信者(僕やあなた)の音声や動画への対応版 RSS 購読をしているというわけです。
iTunes の位置づけはどうなっているのか
ここで、iTunes の役割はどうなっているのかというと、配信者をリストしてランキングしたり分類したりするポータルのようなことをしています。あとで詳しく見ますが、iTunes でポッドキャストが掲載されるようにする手続きの中で上記のフィードURLを入力する欄があります。なんならカテゴリ(エンターテイメントなのか教育なのかニュースなのか)なども入力します。ちょっと長くなってきてしまったのですが伝えたいことは、配信は自分でしないといけないということです。RSS フィードも自分で作らなければいけないし更新しなければいけない。また、音声ファイル自体もどこかのサーバーを借りるか設置するかして保存しておいて配信しないといけないということです。
ときどき驚かれる方もいるのですが、iTunes/Apple が音声ファイルを保存したり世界に配信したりはしてくれないのです。では、どうやるか。そこで WordPress の登場となります。
WordPress を使ってポッドキャストを配信できる
WordPress とはブログやウェブサイト、アプリケーションを作るための道具です。WordPress の特徴は、無料でなんでもし放題(その代わり自己責任)、デザインは選び放題なこと、また、ブログやウェブサイトを作る時に必要になる機能は、必要なものをどんどん簡単に追加できるということです。WordPress を使ってポッドキャストを配信することもできます。
興味はあるけれども WordPress の使い方がよくわからないよという方は、Amazon や Google、コミュニティイベントで基本的なことを調べてみてください。(ちなみに僕はこのツールを使って仕事をしています)(ちなみにこの https://ogi.osampo-radio.com/ 自体も WordPress で動いています)(ちなみにWordPressに関する本も書いて、イベントもやって、講師や講演もして、ブログも書いています)。
2016年版 WordPress でポッドキャストを配信するためにもっとも信頼できそうなプラグイン
このプラグインを使いましょう。この他に、「WordPressでポッドキャストのススメ あるいは発信するのって楽しいしWordPressいいよね、という話。」という技術ブログに書いた僕の記事で紹介していた「Blubrry PowerPress Podcasting plugin」というのもあるのですが、もろもろも理由でこちらのプラグインがオススメです。
管理画面が英語になってしまうのが辛いところですが、その名の通り「本当にシンプルなポッドキャスト」を実現してくれます。
このプラグインが提供してくれる主な機能は以下のものです。
- 投稿、固定ページの他に「Podcast」というポッドキャスト専用の記事(Episodes)を作る場所(投稿タイプ)を作ってくれる
- ひとつのウェブサイトでいくつものポッドキャストを作成できる場所(Series)を作ってくれる(タクソノミ)
- ポッドキャストの記事に、その場で再生できるプレイヤーを作って表示してくれる
- ポッドキャスト配信をするためのフィードを作ってくれる(エピソード別にたくさん作れます)
- iTunesに登録するためのFeedをカスタマイズしてくれる
- 今後、別のプラットフォームにポッドキャストが移動するときのための機能を提供してくれる
便利です。
スピーカー(話し手)で分類したりやアクセス解析(何人聞いたか)を確認しよう
また、このプラグインでは、ポッドキャストに出てくる人たちを登録したり、Statsといって、どのコンテンツがどの期間に何回、どういう方法で(プレイヤーなのかダウンロードなのかポッドキャストアプリなのか)聞かれたのかを知ったりしたい場合には、このプラグインと一緒に動くプラグイン用プラグイン(Add-ons)を入れることができます。
Add-ons – Seriously Simple Podcasting
これらもすべて無料です。
5. iTunes での配信方法、Android など iPhone 以外で購読者への配信方法
では、ポッドキャスト配信用の基盤がぼちぼちできてきたら、いよいよ iTunes での配信登録をしてみましょう。
登録は簡単です。
まず、iTunes Connect というウェブサイト(https://podcastsconnect.apple.com/)にアクセスします。Apple のアカウントを使ってログインをする必要があります。ログインすると以下のような画面が表示されます。
僕の場合は、4つの既存のポッドキャストがすでに表示されているのがわかります。次に左上にあるプラスのマークのボタンをクリックすると、フィードURLを入力するためのフォーム、「検証」と「送信」ボタンが表示されます。
URLはさきほどのプラグインで作ったものをコピペします。検証ボタンは、Apple がそのURLで正しいのかを教えてくれるボタンですので試しましょう。大丈夫そうだったら「送信」ボタンを押してしばらく待ちます。
1週間以内に以下のようなメールが届いて完了です。
iPhone じゃないユーザーにもポッドキャストを届けたい
その場合、先程のRSSのフィードのURLを教えてあげれば大丈夫です。ウェブサイトなどで上手に告知してみましょう。僕のウェブサイトでは、各エピソードのコンテンツの真下や、全ページのフッターなどでわかりやすく表示しています。
海外には、アンドロイドやスマートカーなどのアプリからポッドキャストを探したりするためのプラットフォームもあるようなのですが、日本にもあるのかしら?知っている方がいらしたら教えてください。
6. リモート録音には、Skype とかではなくて Zencastr.com がオススメ
ポッドキャストのリモート録音とは、離れた場所にいる二人や三人が、コンピュータを介して録音をすることです。これが意外に難しいんです。
- Skype から録音するための方法が煩雑
- お互いの声の大きさが違うことがある
- 声の大きさを揃えようと思うと、話しながら自分の声を録音できる環境を作らないといけない。
- しかも、相手の声は入らないようにしないといけない
特にゲストが出演するときなど、できるだけ参加のハードルを低くしなくてはならないので、Skypeインストールしてくださいとか自分の声を録音してくれとかドロップボックスにアップして共有してくれとか、やってられないわけです。
そうしたことを解決してくれるのが、 Zencaster です。以下の動画を再生すると分かりますが、
- アカウントを登録するとページがもらえる。
- ページの中でエピソードを作る(URLがもらえる)
- そのURLを出演者にシェアすることができて、
- その場で録音ボタンを押せばOK
- その後、各人の話し声が mp3(普通の音質) と wav(高音質)のファイルでドロップボックスにアップされる
という仕組みです。これなら、アカウントの持ち主がURLを発行して、その他の出演者やゲストスピーカーの人たちはそこにアクセスするだけで済むわけです。簡単ですね!
このサービスを知ったのは、僕が今朝出演した JAMstack Radio Podcast というアメリカのサンフランシスコのスタートアップのポッドキャストのホストの方がこれを送ってきたからでした。今までもリモートでポッドキャストやりたいなぁ、と思いつつも特にゲストの方に対して煩雑なことをお願いするのがいやでやれていなかったので、これは便利だなぁと思って紹介してみました。このサービスを使った別のポッドキャストもそのうちやりたいと思っているので、お楽しみに!
まとめ
さて、長い記事になってしまいましたがいかがでしたでしょうか。
シンプルさを追求して、できるだけ手軽にポッドキャストをすることで、発信することの楽しさや自分の言葉を残していくことで後々の感慨深さに繋がったり、はては将来大きくなった自分の子どもたちにもその時親が何を考えていたのかを示すことができたりと、生活が面白くなっていくことと思います。音声版のブログみたいなもので、かつラジオのような、聞いてくれる人との親近感が生まれるポッドキャスト、みなさんもやってみてくださいな!
僕がこれまでにやってきたポッドキャスト
中途半端に終っているもの、回数が超少ないものもあるのですが、最後にご紹介します。
- お散歩ラジオ、タイ移住編: 2014年頃にタイへの移住を決めてから実際に移住を完了するまでに、妻との計画会話や視察先の人たちへのインタビューなどをしたポッドキャストです。家賃の話、退職の話、教育の話、現地で働く人々の声などが収録されています。
- ころらじ: ころぐ というウェブサービスを運営しているのですが、その派生版ブログからさらに派生したのが子育てについて語るころらじです。
- お散歩ラジオ2: タイへの移住を完了した後、その時に思ったことを残そうと思って中途半端になってしまったのがこれです。
そして、2016年末現在進行系のものが、男木ラジオとなっております。みなさん、ぜひ購読を!
冒頭の画像は友人の Noel Tock が撮影したものです。
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